曲中に語りの入る歌

曲中で語る歌の収集家

Vol.3 高原の二人(せんだみつお)

「君といつまでも」と「恋は紅いバラ」を取り上げたならば、忘れないうちにこの「高原の二人」も押さえておかねばなるまい。なぜかって、前述の二曲にそっっっっくりなのである。

漫才芸人であるせんだみつおが「君といつまでも」をリスペクトして、一芸として披露していたというもので、まったく、「恋は紅いバラ」の派生型が次々に生み出されてゆくのはなんともけったいな感じがするのである。

 

大体、歌というのは言うまでもなく歌手の本分であるわけだが、今時はさておき、特に80年代なんかは俳優女優もみんな一曲は歌っているというのが当たり前という風潮があったりしたものだ。テレビでよく見るあの人も、この人も、その人も、実は持ち歌の二つあったりするもので、結構うまいのから、なかなか聴くのに体力を使うのまでピンキリだったりしたのだ。

しかし、ここへ来て芸人というのは、これはもうとりあえず困ったら歌っておけばおkという事だったのだろうか。もっとも、アイドル歌手が芸人になったりということはよくあったけれども、最初からの芸人だって歌を出すのだから、歌に敷居はないのである。

そういえば、こう書いていて思い出したのは、レスラーなのに歌を歌っていたデビル雅美などという人もいたなぁ。あれは結構いい歌いっぷりだったからなかなか良かったのだけれども、せんだみつおは、まぁ、そのなんというか...

 

曲調は加山雄三のそれとよく似て作られているので、同じようにゆったり調である。加山雄三らしさを出そうという歌い方なのは分かるが、どうも気の抜けたような息遣いがいけない。台詞の話し方も、どうも幼いような、子供っぽいような印象を受けるのである。それも織り込み済みでもってのパロディーというなら、素晴らしい出来だ。

歌詞は結構いい感じで、星空の下男女がならんで草原に寝転んでいる情景がありありと浮かんでくるようである。女の子と二人でキャンプなんかへ行ったら、口ずさむ価値はあるかもしれない。

 

・台詞

たまんねぇなァ 君がこんなに近くにいてくれるなんて きのうまでのことが まるでウソみたいだ 君が欲しいんだ ダメかい?

 

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1977年発売

 

パロディー度            ★★★★★

意外といい感じのシチュエーション度 ★★★☆☆

声のガラガラ度           ★★★☆☆

Vol.2 恋は紅いバラ(加山雄三)

前の記事で加山雄三の「君といつまでも」を紹介したわけだが、立て続けに加山雄三を取り上げるのにはワケがある。まぁ、聞いていただければすぐに合点がいくこと間違いなしということなのであるが、つまり、「君といつまでも」とそっっっっくりなのである。

しかし、パクリか!?パクリなのか!?と思うのは少し早い。なんでも、この「恋は紅いバラ」をベースにして、というか、リメイクして「君といつまでも」が出来上がったものであるらしいのだ。「君といつまでも」はジャズ曲をそっくりそのまま持ってきて歌を乗せたのだという話があるが、なるほど、この「恋は紅いバラ」を聴くと、隠しきれないアメリカンムードが漂ってくるのである。私の浅はかなアメリカのイメージを掻き立てて想像するなれば、ところどころノイズの飛ぶ白黒の画面の中で、背の高い背広を着こんだ白人がタバコをふかしている。窓の外にはトラムが走っている...と言ったところか。

 

曲調は「君といつまでも」と同じようなスローペースのメロディーで構成されている。しかし、「君といつまでも」が大海原のようなゆったり感であるのに対して、こちらは暖炉でゆれる炎のようなゆったり感を醸し出しているような気がする。歌詞にしても、こちらは愚直に幸せな「君といつまでも」とは結構違う。好きだけれどもそうと面と向かっては言えない、どこか高飛車な意固地な男のエゴを歌っているように感じる。

 

・台詞

僕は君が好きなんだ だけど だけど そいつが云えないんだな

でもね 僕は君を幸せにする自信はあるんだ

 

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1965年発売

 

声が渋い度              ★★★☆☆

アメリカかぶれ度           ★★★☆☆

同じような曲を立て続けに出すんだな度 ★★★★★

Vol.1 君といつまでも(加山雄三)

世の中、歌は星の数ほどある。ともすれば星よりもたくさんあるかも。そして、歌が星の数ほどあれば、その宇宙に紛れて台詞ソング(と勝手に呼ぶことにしよう)も雲の数ほどくらいはあるものだ。

などと良く分からないことを言ってみたけれども、ともかくそんな数多の台詞ソングの中でも特に有名なのは、やはり「君といつまでも」ではないだろうか。海外でもよく聴かれているとあって、発売から半世紀以上が経った今でも多くの人が知っている。台詞ソングの金字塔ともいえる一曲。

 

加山雄三というと、確か一昨年の紅白で赤い欄干の橋の上で袴姿で歌っていたのを覚えているが、そういえば今年は居なかったような...と思って調べてみると、2022年を最後に引退していたらしい。ちなみに、どうして一昨年の紅白を覚えているのかと言えば、2番の歌詞が分からなくなってあたふたしているのがやたら脳裏に鮮明であったからである。

 

曲調は全体的にスローペースで難しい転調などもない。たゆたうようなゆるやかなメロディーが心地よい。歌いだしの、優しく声を乗せるような歌い方も、なんだかとっても「幸せだなぁ」という感じがある。

語りの節は間奏の18秒間。そこまで長いわけではないが、歌詞全体のボリュームが少ないので、これでも結構、一曲を通しての比重は高いように感じる。そして、この語りの台詞は、編曲が気に入った加山雄三自身が思わず口にしたものを挟んだというのは有名な話。

 

・台詞
幸せだなぁ 僕は君といる時が一番幸せなんだ 僕は死ぬまで君を離さないぞ いいだろ

 

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1965年発売

 

台詞ソングの金字塔度 ★★★★☆

ゆったりサウン度   ★★★★★

台詞の幸せ度     ★★★★★